大木和音CDデビュー15周年記念 2枚組アルバム『フランスの花』
大木和音CDデビュー15周年記念 2枚組アルバム『フランスの花』
¥3,500(税別)
大木和音とクリスチャン・クロール、調律を手掛ける狩野氏の対話によって織りなされるハーモニー、響板から立ち上がってくる美しい香りが見事に表現されている「フランスの花」。 DISC1にルイとフランソワの二人のクープランのクラヴサン音楽を、DISC2には2012年録音のラモーがリマスタリングされて収録。
【収録内容】 【CD1】- 75'20" ルイ・クープラン(1626頃-1661) Loius Couperin フランソワ・クープラン(1668-1733) François Couperin
組曲 ヘ長調(L.クープラン) Suite en fa majeur (L.Couperin) 1. プレリュード Prélude [2'27"] 2. 荘重なアルマンド Allemande grave [3'20"] 3. クーラント Courante [1'20"] 4. サラバンド Saranbande [2'26"] 5. ブランル・ド・バスク Branle de Basque [0'50"] 6. ジーグ Gigue [1'49"] 7. シャコンヌ Chaconne [3'02"]
第23オルドル(F.クープラン) Vingt-troisiéme Ordre (F.Couperin) 8. 大胆 L'Audacieuse [3'42"] 9. 編み物をする女たち Les Tricoteuses [2'27"] 10. 道化役 L'Arlequine [1'53"] 11. デロス島のゴンドラ Les Gondoles de Délos [6'44"] 12. サテュロス、山羊の足をした牧神 Les Satires,Chevre-pieds [4'38"]
組曲 ハ長調(L.クープラン) Suite en ut majeur (L.Couperin) 13. プレリュード Prélude [2'07"] 14. アルマンド Allemande [2'41"] 15. クーラント Courante [1'36"] 16. サラバンド Sarabande [1'48"] 17. パサカーユ Passacaille [5'44"]
第7オルドル(F.クープラン) Septiéme Ordre (F.Couperin) 18. メヌトゥ La Ménetou [3'26"] <子供時代> 19. ミューズの誕生 La Muse Naissante [2'35"] 20. 幼年期 L'Enfantine [2'02"] 21. 思春期 L'Adolescente [2'31"] 22. 悦楽 Les Délices [3'58"] 23. バスク風 La Basque [2'31"] 24. シャゼ La Chazé [5'14"] 25. 気晴らし Les Amusemens [4'29"]
【CD2】- 62'23" ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764) Jean-Philippe Rameau
クラヴサン曲集(第2巻、1724年) Pièces de clavecin (Deuxième livre,1724) 1. 恋の嘆き Les Tendres Plantes [3'12"] 2. ソローニュの愚か者 Les Niais de Sologne [5'43"] 3. ため息 Les Soupirs [6'49"] 4. 陽気 La Joyeuse [1'01"] 5. 女神たちの対話 L'Entretien des Muses [6'23"] 6. つむじ風 Les Toubillons [2'22"] 7. 一つ目巨人 Les Cyclopes [3'22"]
新クラヴサン曲集(第3巻、1727)より Nouvelles suites de pièces de clavecin(Troisième livre,1727) 8. アルマンド Allemande [8'03"] 9. クーラント Courante [4'25"] 10. サラバンド Saranbande [3'20"] 11. 3つの手 Les Trois Mains [5'10"] 12. ファンファリネット Fanfarinette [3'08"] 13. 意気揚々 La Triomphante [1'51"] 14. ガヴォットと6つのドゥーブル Gavotte et doubles [7'34"]
【演奏者】 大木和音(クラヴサン) 仕様楽器:クリスチャン・クロール(リヨン) 1770年製のレプリカ オリヴィエ・ファディーニ(パリ) 制作 【録音】 2022年2月【CD1】、2012年10月【CD2】 Why Nuts? Studio |
演奏における個々の楽曲の描き分けがすばらしいが、ルイのノン・ムジュレ(規則的な拍子やリズムを持たない様式)による「プレリュード」の幻想性は特筆に値する。ここでも私はルドンの絵画を夢想する。単に美しいだけではなく、どこか陰りや黒を感じさせるルドンの花の絵画の数々だ。またフランソワでは、特に「デロス島のゴンドラ」での繊細な美しさがすばらしい。狩野真の絶妙な調律とあいまって、きらめく和音が乱反射し、まばゆいばかりの色彩を浮かび上がらせる。この狩野の手掛ける調律は、ラモーの録音の時も実に効果的であったが、この録音ではさらに重要な役割を果たしている。例えば、ルイの「シャコンヌ」や「パサカーユ」での、鑑賞者をはっとさせる和音の効果は、狩野の霊感あふれる調律あってのものだろう。曲の解釈にまで触れる演奏者と調律師の競演を聴くことができるのだ。そして、そんな演奏と調律の織りなす調和を見事にとらえたタッド・ガーフィンクルの録音は、まさに芸術。タッドさんの録音なくしては、大木の卓越したテクニックによる繊細なチェンバロの音色も、狩野の調律の妙も、このアルバムにおいて最大限の効果を発揮しえなかったであろう。
ルドンの絵画は、あらゆる想像力を受け入れ、鑑賞者はその世界を自由に泳ぎ回ることができる。演奏・調律・録音が三位一体となった大木和音の『フランスの花』も同様だ。鑑賞者のみなさんは、ぜひご自分の想像力を解放し、その世界を泳ぎ回ってほしい。そこにはあなたが想像出来得るあらゆる花々が咲き誇る世界が待っている。
2022年8月 香住 隼