大木和音アルバム『三美神』絶賛発売中 DSD11.2Mz1bit マルチ録音 No editing

CD 「三美神」制作コンセプト

 

1.ラモー、ロワイエ、デュフリを一人の作曲者のように描写したかった。

時代を超えて伝わるフレンチバロック音楽。

ラモーのドラマティックな音楽性は、類を見ないゴージャスさと、色彩豊かな和声の世界に、私たちを引き込んで行く。それは、作曲された時代を超えて、むしろ未来から来る音を聞いているように思える。

ラモーの呼びかけに応じたように、二人の音楽家が現れ、音楽にまた異なる方向から光を当てた。

同一の肖像でも、光の当たる方向で全く別の物に見えるように、その表現は、時間が過ぎ行く感覚までも変えた。

緻密に構築される芸術は、多種多様な表現をあるテーマに沿って、壮大な美の世界を私たちに見せてくれる。

 

今回の録音は、一般的な、バロック時代の作曲家の伝記でも、百科事典の様な歴史の学習のための物でもない。

生きた、また脈絡と生き続けて、ますます力を増す彼ら(ラモー、ロワイエ、デュフリ)のフィロソフィーと演奏家 大木和音のコラボレーションなのです。

 

2.チェンバロ(クリスチャン・クロール)から織り成される、これまでの楽器とは異なる音像と空間と時間 (設計から来るもの)

フランスには、オリジナル楽器を修復する、技術者が存在する。

ミュージアムピースに関しては、修復に使用するマテリアルに対しての指示は厳しい。制作当時の素材を生かし、忠実にどのように造られたかが資料として正確に残るように修復する。

しかし響板や、ベントサイド、支柱など、至る所は経年変化により縮んでしまう。また木材の応力は極端に少なくなり大型の楽器にしては、約5ミリの響板の厚さでは、弦の張力に耐えることはできず、変形し、過去の音楽家が弾いていた頃の音色とは程遠いものであることは、容易に理解できる (無論過去の偉大な音楽家は、献上された新品の楽器を弾いていたのだから)。

 

修復家の仕事は、まず記録を正確に残すことにある。地味ではあるが、非常に重要な仕事である。木材はどのようなものを使っていたのか、木材に最初、どのような力を与え(応力を作るため)加工していくのか。塗料についてはどうだったのか。松脂が化石化した物をアルコールで溶かし、何回も重ねて塗る。木材だけではなく塗料もかなり重要なマテリアルだ。楽器が放つ倍音は、塗料でかなりの部分左右されてしまうと言っても過言ではない。ヴァイオリンを熟知している方なら当たり前のことと言うだろう。

 

しかし、修復家の努力により過去の製造法が徐々に明らかにされ、また現代のピアノ製作者がチェンバロの制作方法からの伝統技術によって継承されてきた知識 (特に響板の制作方法)の解明によって、より過去に製造されたチェンバロを再現することを可能にした。

6年の歳月をかけ、忠実に再現されたクリスチャン・クロールは、目まぐるしく変化する光の様な音色を放ち、どのように演奏に作用するかが、今回のもう一つの録音コンセプトでもある。

 

3.大木和音というチェンバリスト。

彼女は、ニュートラル且つドラマティックなチェンバリストだ。

ラモー、バッハ、からリゲティまで楽しんで弾きこなす。

今回のプログラムは、彼女の感覚で組んだ。

フランスバロックの再現だけではなく、今生きている音楽としてアクティブに表現する。楽器の特性を感覚的に熟知し、音楽の呼吸と楽器の呼吸とを絶妙にコントロールしながら、自分の音楽を構築していく数少ないアーティストだ。

その彼女が、このレコーディングの締めくくりに、二回目の三美神をピアニーノで披露する。

 

 

4.DSD11.2MHZ/1bit 録音の意味

この録音は、空気の流れる音まで正確に録ってしまう事により、編集はできない。

要するに一発録り、ライヴ録音である。

DSD11.2MHZ/1bitマルチ録音は、上質なフィルムの写真のように、その時間と空間をそっくり切り取って見せてくれる。上鍵盤、下鍵盤の音色の違いを滲む事なくクリアーに録音し、感情面、テクニカル面をはっきり表現する。

音数の多いチェンバロ音楽には、確かにリスキーではあるが、音楽の本質を求めるならこの録音方法が一番人々の心に伝わると思い、決断した。

結果、編集ありきの録音のようなマネキン的美しさと異なり、演奏家、楽器、作曲家の生きたコラボレーションをまじかで感じることができたと思う。

None edit (無編集)というリスキーな課題をレコーディング直前で知らせたにもかかわらず難なくこなした、大木和音には圧倒される。

 

 

 

制作プロデューサー 狩野真

 

 

 

 

 

 

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